ブラジル出身の女性ピアニスト&ヴォーカリスト、タニア・マリアのツアーでブルーノート東京とコットン・クラブに出演したブラジリアン・パーカッション・プレイヤー、エドムンド・カルネイロが、彼のフランスでの活躍、パーカッション、そしてニュー・アルバム『The Hands』について、情熱的かつ誠実に、とても素敵な笑顔で語ってくれた。
ボッサス・ブラジル(以下、BB):お生まれはブラジルのどちらですか?
エドムンド・カルネイロ(以下、EC):私はサンパウロ州のサン・ジョゼ・ドス・カンポスに近い、小さな町で生まれたんだ。
BB:フランスに移り住んでからは、どのくらい?
EC:もう24年も経ったね。
BB:どの様な経緯でフランスへ?
EC:サンパウロ出身のシンガー、シャン・モレノと一緒にフレンチ・リビエラと呼ばれる南フランスのジャズクラブへツアーにいったんだ。ツアーが終わったとき、マルセイユの近くにあるレユニオン島という所で、ブラジルのパーカッション・ワークショップをやらないか?という誘いを受けてね。実際には、ワークショッップというよりは、多くの場合"ジャム・セッション"だったけど。クラスの誰もが一緒にプレイして楽しんでいたよ。
BB:それは音楽を学ぶ最高の方法ですね。
EC:そうだね。その"ワークショップ"の後に近くのカフェに食事と休息をかねて行った時に、僕を知っているお客さんが、そこにいる他のミュージシャンと一緒にプレイしてくれと言うんだ。まだコーヒーも残っていたし、休みたかったんだけど(笑)、結局そこにいたミュージシャン達とまた一緒にプレイをしたんだよ。
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そうしたら(後で知った事なんだけど)その中にいたミュージシャンの一人が、
フランスではとても重要で有名なアーティストのジャック・ヒゲランだったんだ。たとえば「フランスのカエターノ・ヴェローゾ」と言えば想像がつくかな。その後、彼が僕をフランスへ呼んでくれて、それから5年間彼と一緒にプレイする事になったんだ。
そうやって時は過ぎていったけど、当時ブラジル人のパーカッショニストは世界でとても愛されていたので、結局フランスに住む事にしたんだ。
BB:ナナ・ヴァスコンセロスもまだフランスにいたんですか?
EC:いや、彼はすでにアメリカに渡っていたね。ナナは身体的・知的障害を持つ子供たちのために働いていたよ。彼はパーカッションを使ったリハビリテーションの発展に尽力していたんだ。
BB:タニア マリアとはどのくらいの期間プレイしていますか?
EC:15年かな。
BB:フランスでの仕事はどうですか?
EC:ジャズ・フェスティバルが充実しているのが良い点だね。フランス政府も助成金を出してくれるし、それがフランスにいる大きな利点だね。残念ながら昔パリにたくさんあったサンジェルマンとかジャズクラブのほとんどは店を閉めてしまって、今はもうわずかしか残っていないんだ。
BB:ジャズクラブというのはミュージシャンにとって毎日プレイ出来る、フレンドリーでとっても重要な場所なのに。
EC:その通りだね。でもヨーロッパは小さいというメリットがあるし、今は欧州連合(EU)だから、国から国へ行き来するのがはるかに簡単になったんだ。だから僕らはフランスだけでなく、ヨーロッパのどこかしらでプレイしている。ビザのタイプ"Chengin"を持っていれば、ヨーロッパ25カ国を旅できるから、ドイツ、スウェーデン、イタリアで多くの仕事をしているよ。
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BB:あなたの新しいアルバム『The Hands』について教えてください。
ECは:このアルバムは"伝統的"なものではなく、なるべくインターナショナルなものを目指している。もっと包括的で、もっと世界に向けて開放されたものにしたかったんだ。
BB:メロディーやハーモニーを奏でない楽器を扱う、パーカッショニストとして、どんな風に曲を創造するのでしょう?
EC:とても単純な事だよ。メロディーとリズムを書いてから、それをもっと豊かなものにするために例えばクラウス・ミュラーやレオ・モンタナらを呼んで作っていくんだ。クラウス・ミュラーはハービー・ハンコックのアレンジャーでもあるし、
素晴らしいハーモナイザーでもある。僕は彼らと制作をシェアしたり、コラボレートすることが好きなんだ。
でも、アルバムの中にはパーカッションのソロ演奏だけで仕上がっている曲もあるよ。なぜなら、パーカッションという楽器はメロディックにもプレイ出来るからだよ。例えば有名なジャズドラマーのマックス ローチ。彼のドラム・プレイからはメロディーが聴こえるだろ?
タニア・マリアは、ハーモニーとメロディは "X"、つまり、もうこの先行くことが出来ないような場所に来ていて、リズムだけがまだまだ広がりゆくスペースがあるの、としばしば言うんだ。
BB:ポピュラー・ミュージックにはクラシック音楽のハーモニーが根底にありますよね。クラシック音楽が既に立ち止まった状態になった今、ポピュラー・ミュージックもこれ以上進まないのかも知れませんね。
BB:『The Hands』は、あなたのサードアルバムですよね
テレビで窒息
EC:そうなんだ。『House Player』はパーカッションだけのアルバムで、『Agnus Dei』というアルバムは映画"ストリート・ボーイズ"のサウンド・トラック部門で、スペインのフィルム・フェスティバルで賞をとったんだよ。
BB:フランスでの生活はどうですか?
EC: とても良いよ。アフリカ人のミュージシャン達と出会えて、プレイ出来る素晴らしい経験をさせてもらったしね。ブラジルに住んでいた頃は、あまりアフリカ人はいなかった。もちろんアフリカ人の祖先を持っている人達はいたけれど、とっても少なかったんだ。フランスにはアフリカ各地から来たアフリカ人がいて、みんなそれぞれ違うプレイ・スタイルがある。それはとても価値ある素晴らしいものなんだ。
BB:ヨーロッパの音楽から何か影響受けましたか?
EC:特に無いと思う。ブラジルにもそういった音楽はあったしね。でも、フランスで人種や文化の全くちがう人々からは影響を受けたね。ナイジェリア人、インド人、チベット人、彼らのドラムやパーカッションの表現の豊かさ、僕らのものとはぜんぜん違うんだ。僕が初めてタブラを手に取ったのもフランスだったな。
BB:エレクトロニック・ミュージックを演奏するのは楽しい?
EC:大好きなんだ。フランスのグループ「Ollano」でエレクトリックミュージックを知った後、 「st Germain」というグループを立ち上げて、 『Tourist』というアルバムがヒットしたんだ。あれからDJ達と沢山コラボレートしたよ。
BB:DJと一緒にプレイする事をどう思う?
EC:面白いねぇ。DJが何を選曲するか、どれだけクリエイティブか、どんなテイストを持っているかにもよるけれど、僕にとっては、彼らはミュージシャンなんだ。例えば、一緒にプレイした事のあるDJ Charles Schillings や DJ Stephane Pompougnac らは、味わい深くて、バリエーションにとんでいて、音楽を高めてくれるんだ。
BB:DJとプレイするためにどんな楽器を使うのですか?
EC:コンガ、ボンゴ、ティンバレス、シンバル、ロートタム(音程が変化させられる打楽器)等々。僕はかなりバラエティーに富んだ、色々な音色のパーカーションを持っているからね。幅広く色々使うよ。
BB:ミュージシャンの中にはパーカッショニストというだけでなく、ちょっとした発明家もいて、独自の打楽器を創る人もいますよね?何か楽器を発明した事はありますか?
EC:ずっと前にContemporanea(ブラジル最大の打楽器メーカー)のスタッフに、ツアーに便利な胴の短いタンタン(筒状の打楽器)を創って欲しいと頼んだ事があるよ。それはね、最終的に随分なヒット商品になったんだよ。
BB:本日は素晴らしい演奏と、沢山の笑顔をありがとうございました!
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